研究活動のためのソフトウェアツール

世界中のすべてのソフトウェアを試して回ったわけではありませんが, これまでの情報収集の結果,私の推薦するソフトウェアを紹介します。 当然,私の使ったことのあるソフトウェアしか検討対象にありませんので, もっと良いものをご存知の方は「良い点を明確にした上で」お教えいただけるとありがたいです。

現在のところ,ここにはWindows用アプリケーションのみ紹介しています。 Microsoft社製やAdobe社製のアプリケーションは確かに研究活動の必需品ですが, いまさらなのでこんなところには載りません。

このページで用いている free share などのマークは,そのソフトウェアのライセンス形態のうち,一般的な使用において使用料を要求するかどうか について簡素かつ便宜的に示したものに過ぎません。 細かなライセンス条項は各ソフトウェアのドキュメントをお読みください。

テキストエディタ

私がテキストエディタを選ぶ基準は,優先順位の高いものから

  1. 各種 Unicode エンコーディング(最低でも UTF-8LE/BE × BOM 有無の UTF-16)が扱える
  2. 大きなサイズのファイルを開いても大丈夫。実用に足る時間で処理できる
  3. 正規表現による検索/置換ができる
  4. キーバインド(ショートカットキー)関係の設定がしっかりしていてキー操作だけで全機能を制御できる
  5. フリーソフトウェアである,もしくは,教育・研究用途向けに無料ライセンスを提供している

となっています。 そもそも Unicode (すくなくとも日本語) にきっちり対応しているエディタがそれほど多くありません。 大抵のエディタは ISO-2022-JP,Shift-JIS,EUC-JP の読み書きには対応していますが, やはり時代の要請から Unicode 対応は必須です。

また,研究活動においては馬鹿でかいサイズのファイル(メガバイト以上)を 扱わなければならない状況も多々あり,大きなファイルを問題なく扱えることは 「研究のための」を掲げるなら必要事項でしょう。

まともなエディタなら検索,置換の機能が付いていないものは無いと思いますが, 正規表現が使えるものとなるとこれまた数が限られてきます。 正規表現は初めて見る人には小難しく感じられるかもしれませんが,そのパワーは絶大であって, 私はもはやこれが無ければ生きていけません。:-) コンピュータの最も得意とする仕事のうちの一つ,検索の能力を,フルに発揮させることができます。

残りの項目は好みの問題です。私はコンピュータ操作のほとんどをキー操作で行いますので, お行儀の悪いソフト(Windows アプリ開発で推奨されているアクセスキーの付与などをしていないソフト) は嫌いです。また,フリーを好むのは単に私が学生でお金を持っていないからです。 学術活動に対して理解があり,良質のアプリケーションを低価格や無料で提供してくださる ソフトウェア開発者の方々には,いつも本当に感謝しております。

他にも研究用途に有用なテキストエディタの機能はたくさんあります。 マクロ,アウトライン編集,色分け表示,複数パートの同時表示,diff表示, 外部ツールとの連携,バックアップ保存など。 しかし私にとってこれらの優先順位は高くなく,できるに越したことはないという程度です。 とは言っても結局は,これらが可能なエディタを選んでいるんですけどね:-)

さて,このような基準から,いくつかのエディタをあなたの将来の メインエディタ候補として挙げてみましょう。 次に挙げるエディタはみな上記の基準をすべて満たしています。

サクラエディタ free

フリーソフトであり,オープンソースで共同開発されたものです。 今でも有志によって開発が続けられていますし,もちろんその気になれば開発に参加することもできます。 (当然,ソースレベルで個人的にカスタマイズすることもできます。) 正規表現は Bregexp.dll。grep 機能(検索)が組み込まれています。 Unicode は上記条件にあるものと UTF-7 に対応しています(内部表現は SJIS なので日本語以外はダメ)。 自前で解析するアウトライン編集機能があります。 ポイントはやはりオープンソース。

EmEditor Professional

アカデミック ライセンス(学生,教職員は無料)と テクニカル ライセンス(ソフトウェア作者は無料)が用意されています。 シェアウェアなだけあって,基本的機能はしっかり。 マクロ機能は WSH を利用し,JScript や VBScript によるマクロを動かせます。 正規表現は WSH の RegExp ではなく Boost の Regex++ で実装しているようです。 (マクロでは RegExp が使用可。) grep 機能も組み込まれており (grep とは表記されていないですが),検索だけでなく置換も可能です。 このエディタは内部表現が Unicode のようで,日本語だけでなく各種言語の文字に対応してます。 ヘルプには「Windows でサポートされるエンコードをすべて利用できます」と書いてあります。 タブ型のウィンドウ管理,SDI との動的切り替えができます。 また,マクロだけでなく,プラグインで機能拡張できます。

2006-02-07 追記. 残念ながら,アカデミックライセンス/テクニカルライセンスは新規受付を停止されたようです。

xyzzy free

emacs みたいなエディタです。そこから必然的に強力だということが推し量れます。 Common Lisp でマクロが書けます。 これを勧めるのは,あのキーバインドが染み付いてしまっている unix 系使いな人か, Common Lisp を使いたい人に対してのみです。

秀丸エディタ

学生,フリーソフトウェア作者,Windows 関係の書籍の執筆・編集者に対するフリー制度があります。 正規表現は自社開発の HmJre.dll(JRE32.DLL の上位互換)です。 これによって特徴の一つである「あいまい検索」も実現しています。 こちらもタブ型化ができ,タブの使い勝手は(今のところ)EmEditor よりこちらのほうが上です。 このエディタはとても軽く,他とは違って巨大なファイルの読み込み中もUIが動いてくれます。 EmEditor ほどではないですが多様な文字コードに対応しています。 自社開発の強力なマクロ機能は有名で,様々な目的に応じた多くのマクロがウェブ上で公開されています。

私はこれらのテキストエディタを使い分けていますが, Windows XP のきれいな UI にこだわるなら私の一押しは現在のところ EmEditor です。

動向に注目している・していた その他のエディタ

  1. first published on 2004-07-01
  2. last modified on 2005-02-20

バイナリエディタ

最も根源的な編集ツール,バイナリエディタ。 これがあれば何でもできます(語弊あり)。 バイナリエディタを選ぶ上ではそれほど特殊な基準は持ち合わせていません。

こんなところです。

Stirling free

フリーで高機能なバイナリエディタです。MDI で,同期スクロールができます。 ファイルサイズが違ってもファイルの比較ができますし,相違箇所一覧が便利です。 どうやら LE だけですが UTF-16 の表示ができます。 また,構造体編集,ビットマップイメージ表示,そしてバイナリ grep ができます。 これ1つあれば十分かもしれません。

BZ free

こちらもフリーです。SDI です。Stirlingがすごいので 他はいらないのではないかと思われますが,こちらのほうがすこし軽い感じがします。 特に大きなファイル(数十メガ以上)を開くときは断然こちらのほうが速いです。 ですので,ちょっとしたバイナリ表示ならこっちへ送った方がよいでしょう。 こちらは LE だけでなく BEUTF-16UTF-8 も表示できます。 閲覧用にして比較や編集は Stirling に任せるという使い方はどうでしょうか。

  1. first published on 2004-09-10

アーカイバ

日本人を LHA から卒業させたいという日頃の願いが少しでも 成就に近づくようにこのアーカイバ編を書きます。

話を2ステップにわけます。用いるアーカイブファイルの形式と, それを操作するアプリケーション(アーカイバ)です。 アーカイブ形式を選ぶ基準は

ファイルの追加ができること,パスワードがかけられること,などは次点です。 圧縮の速さも私はあまり問題にしません。これらの基準のどれを優先するかは アーカイブファイルを作る目的によります。ここでは用途を特化せずにいくつか並べます。

7z (LZMA)

現時点では私の知る限り最高の圧縮率を誇ります。

RAR

圧縮率が高く,とくに無圧縮のマルチメディア系ファイルや 実行ファイルの圧縮率が秀でています。 リカバリーレコードが付加できるのが特徴です。

Zip

普及度は一番でしょう。最近の Windows ではアーカイバは必要なく,エクスプローラで Zip ファイルをフォルダのように開くことができるようになりました。

CAB

Microsoft 社開発の形式でほぼ Windows 専用です。高い圧縮率を出しますが, とくに Windows の実行ファイルの圧縮に関しては最高レベルです。 圧縮作業にかなり時間がかかります。

tar + gzip

unix 系での普及度を考えるならこれ。

dgc

和製高性能圧縮形式。圧縮率は他の高圧縮な形式に引けをとりません。 リカバリーレコードも付加できます。

あるファイル(群)を圧縮するのにどの形式が一番小さくなるかは, ファイルの種類に大きく依存しますし,やってみないとわかりません。 7z が一番であることが多いですが, dgc や RAR,CAB が一番のときもあります。

さて,当然ながら,これらの形式を扱えることがアーカイバを選ぶときの要件になります。 その他にも,UI の扱いやすさ,アーカイブの妥当性チェックなど考慮する点はありますが, やはり扱える圧縮形式とそのオプションに一番左右されます。

ZELDA

多様な形式に対応しているアーカイバはたくさんありますが, 上記のすべてに(自前,間接は問わず)対応しているのは2004年9月時点でこれだけのようです。 ということで, 多様な形式を1つのアプリケーションで扱えることを売りにしているタイプではこれがトップでしょう。 シェアウェアですので,金額に見合っているかどうかは各自試用して判断してください。

アーカイブX free

Windows のエクスプローラで Zip や CAB を扱うときのような感じで, 他の圧縮形式も扱えるようにするという画期的なアーカイバです。 エクスプローラで 7z や lzh をオープンできます。 DLL型で,多様な形式に対応しています。 残念ながら上記のうち dgc は対応しておらず(gca はOK), 開発元のウェブサイトが(これを書いている時点で)閉鎖中のようで 今後の対応はあまり見込めません。が,おもしろいソフトです。

WinRAR

RAR 形式アーカイブを展開するなら他のソフトでもできますが, RAR 形式で圧縮するにはRAR開発元のこのソフトか付属のツールを使わなければなりません。 よって RAR ファイルを作りたければ必然的に WinRAR をインストールする必要があります。 これは試用期間付きのシェアウェアです。

DGCA free

dgc を扱うには圧縮も展開もこれしかありません。他のアーカイバで dgc 対応と表明しているものもこれを間接的に利用しているだけですので, 現在のところ dgc を使うなら DGCA をインストールする必要があります。フリーです。

最後に,(上記のソフトに関してでなく)一般論。 統合型(多種対応)アーカイバにはよくある言い方で内臓型とDLL型がありますが, 私は今のところほんのわずかにDLL型に傾いています。 この高速通信のご時世でDLLのダウンロードが面倒だとは思いません(専用ツールもあります)。 内蔵型では微妙におかしなファイルを吐くことがたまにあります。 複数のアーカイバを使って同じファイルを同じ形式(のつもり)で圧縮してみればわかります。 もう一つの問題は,バグの発見と修正がどれくらいきちんと行われるかで, その点に関してはどちらが有利とも言えないと思います。

  1. first published on 2004-09-01
  2. updated the link to 7-zip site on 2014-07-12 but this section may be obsolete

差分表示

差分表示とは複数のファイルのどこが異なっているかを示すことです。 エディタなどに差分表示機能が付いているものもありますが,ここでは差分表示専用のソフトを紹介したいと思います。

Rekisa free

テキストファイルの差分表示専用ソフトです。 なんといっても,美しい! このリボンは何だ!(正式には「差分概要」と呼ぶらしい。) 表示ソフトなのだから表示が美しく見やすいのは当然ながらキーポイントであって,このソフトはハナマル。 しかも3つ以上のファイルの同時比較表示もできます(1画面で同時表示するファイル数を動的に変更可能)。 開くファイルの指定や文字フィルタ機能において正規表現を使えます(正規表現マッチングで大量ファイルを開くことも可能)。 もちろん文字コードは各種 Unicode も OK。 Subversion にも対応してます。 外部連携もしやすく,TortoiseSVN,Visual Stuido .NET 2003,サクラエディタとの連携例がヘルプに載っています。 テキスト差分表示に特化しているだけあってすばらしいソフトです。

WinMerge free

閲覧用途での見やすさは Rekisa に劣るかと思いますが,マージも必要となると,これを使う価値が出てきます。 マージを行うためのWindows用ソフトとしては定番です。フォルダの比較もできます。 テキストエディタでさらっとプログラムを書いているチープ&クールプログラマには重宝します。 日本語版も作られてます。

  1. first published on 2005-11-01
  2. inserted WinMerge on 2010-06-21

ひみつ道具

個人的な用途で作ったものを物置からほりだすコーナー。

Excel ブックを CSV ファイルに変換する& これをコンテキストメニューから行えるようにする ツール version 2.00d (8,224 Bytes) PD

Excel ブック(.xls ファイル)の中の全シートを CSV ファイル形式で書き出します。 さらにこの機能を右クリックのメニューからワンタッチで使えるようにできます。 自分用だったのでとくにファイルの安全に配慮されているはず。 バージョン 2 では別途変換用プログラムは必要なくなりました(Excel は必要です)。

変換用の外部プログラムを使うバージョンはこちら → version 1.02 サーバから削除しました。ほしい人は連絡してください。

csview version 0.3 MIT License

実験データなどの CSV ファイルを Excel なんて使わずに手軽に GUI & ページング で閲覧するためのツールです。

CSV のテーブルデータに対して SQL (Jet SQL) を使えます! すると何が良いかって,複数のテーブルの結合 (JOIN),サブセットの取り出し (WHERE),多次元並べ替え (ORDER BY),集計(GROUP BY と集計関数)などを駆使して, 簡単にデータを把握できてしまいます。 実験プログラムの出力を見ていて「ああここで SELECT 使えたらなあ」などと思ってしまう SQL 中毒な貴方にどうぞ。

SQL であれこれ操作した結果を再び CSV ファイルへ保存もできるようにしました。

「ここからコマンドプロンプトを開く」ツール version 0.01b (4,312 Bytes) PD

ディレクトリとドライブのコンテキストメニューに「コマンドプロンプト」を追加します。 実行すればそこをカレントディレクトリにした状態でコマンドプロンプトを起動できます。 PowerToys にある Open Command Window Here と同じ機能ですが,PowerToys のそれは 500KB 以上ありますし, 他の機能の点からもこちらをおすすめします。 そのままだと Windows 2000/XP 用です。

アクティベイトキー付きショートカットを一覧するツール version 0.01 (5,559 Bytes) CC-GNU GPL

アクティベイトキー(ショートカットファイルのプロパティにある「ショートカットキー」)の設定されたショートカットファイルを一覧します。 ショートカットファイルへの書き込みも可能です。

File Cast version 0.03 (2,686 Bytes) CC-GNU GPL

このツールは,ファイルを移動させ,ファイルの元あった場所に移動先へのショートカットを作成します。 本体をどこかに飛ばして手元に本体とつながった糸を持っておく,というイメージです。 「送る」に入れたりドラッグ&ドロップで使うことを想定しています。 ファイルの安全性には配慮してあります。

現バージョンでは日本語しか対応してません。インストールやメニューでのテキストが日本語なだけで言語に関係なく機能は果たすはずなので, 他国語が必要な人は中身の日本語部分を修正してください。

R User Configuration (ダウンロードリンクは別のページへ移しました)

統計処理ソフト R のユーザ用設定を行うツールです。主に Windows NT 系の PC(アカウント毎に異なるデスクトップ環境を持つ)で使うことを想定しています。 公式のインストーラは不親切なので,R 初心者の皆さんは CRAN から Setup programを ダウンロードしてインストールした後にコレを使ってください。

R の version 2.6.0 にて動作確認されています。Rの昔のバージョン(R v2.0.0~v2.3.1)を使う人は, 前の版(v0.01)をお使いください。 以前のバージョンはすべてサーバから削除しました。必要な人は連絡してください。

完全に日本語専用です(I18N 対応する気が起こりません)。

えんこーだ version 0.03 (4,428 Bytes) NYSL

文字列やバイナリの簡易な符号化ツールです。文字コード表示,URL escape,Base64,uuencode,Quoted-Printable など。 UTF-16UTF-8UTF-7,ISO-2022JP,Shift-JIS,EUC-JP のキャラクターセットとバイナリファイルのエンコード/デコードに対応。 実用というより,シェルスクリプトと Windows 標準の機能 (WSH & HTA) だけでどこまでできるか,を調べる目的で作成されました。

Blowfish暗号化ブックマークレット (ダウンロードリンクは別ページ)

Blowfishアルゴリズムで選択部分のテキストを暗号化/復号化するブックマークレットです。